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特集 地元作家の書いた本


 秋も深まり、夜も長くなった今日この頃。あたたかい飲み物を用意し、心静かに読書を楽しむのにぴったりの季節です。話題のベストセラーもいいけれど、今年は地元作家が執筆した本に注目してみませんか?身近なテーマもあり、繰り返しページを開いてみたくなる本を紹介します。


「試している大地 ー北海道視記ー」
上田 榮子さん
北海道新聞社出版局 1,500円
「森さんちのあれこれ食べごと」
森 厚さん
一耕社出版 1,300円

 兵庫県出身の上田さん(75)は高校を卒業後、東京のコンサルティング会社で45年間勤務していた。51歳の頃から小説を書きはじめ、約20作を同人誌に発表。ほとんどが優秀作として文芸誌などで取り上げられた。
 しかし、そんな上田さんを病魔が襲った。脳動脈瘤(りゅう)になり、2002年、白老町の保養所に1か月滞在。自然豊かな北海道に魅了され、翌年、苫小牧に移住した。
 「北海道をもっと知りたい」と道内各地を訪れ、見えてきたことや感じたことを教育評論社(東京)の刊行物に執筆。これに加筆して2005年、1冊の本にまとめた。苫小牧や室蘭、美唄、増毛などを訪ね歩いた35編を収録している。自らの人生と重ね合わせながら、各地の風土とまちの「今」を切り取った内容は、道内の文学関係者から高い評価を受けている。
 300冊発行したが、ほぼ完売。苫小牧市立中央図書館(☎0144-35-0511)で貸し出しをしている。

 2000年に「異郷」で第47回地上文学賞を、昨年には「TAKARA」で第52回農民文学賞を受賞した森さん(59)が、4年前に書いた料理エッセイ。
 炊き込みごはんやラーメン、ビーフシチュー、カレイの煮付けといった数々の家庭料理が、自己流の作り方を思い入れとともに紹介されている。分量などは書いていないが調理に工夫をちりばめているので、「レシピ集」として活用できそう。
 「食は家庭の、コミュニケーションの原点」という森さんは、「作って食べることが大事。しょげている人に料理を作ってあげると元気がわいて来るように、料理は人を幸せにする力を持っている」と話す。読み進めるにつれて、大切な人と食事をすることの喜びをしみじみ感じられるはず。問い合わせは一耕社(☎0144・75・6790)へ。

「ROB先生の文化恐竜(交流)」
ロバート・カール・オルソンさん
一耕社出版 1,050円
「苫小牧 第一洋食店 物語父は明治のコックさん」
山下 正さん
近代映画社 1.680円
 米国ミシガン州出身で、苫小牧駒澤大学の准教授・ロバートさん(41)が1991年に来日してから経験した「驚きの毎日」を記した本。昨年1月に出版された。
 日本茶に砂糖とミルクを入れて飲んだり、みそをピーナツバターだと思いサンドイッチを作ったり、葬式では火葬した骨を食べると勘違いしたり…。日々のハプニングを日本語と英語と得意のマンガで、ユーモアたっぷりに表現している。発売してからは、見知らぬ市民から「本読みました!」と話しかけられることも。
 ロバートさんは「トラブルが起きても、すぐに笑い話にできるんです」と笑顔で話す。読みやすく、どのページから読んでも面白い本を探している人にぴったりの1冊だ。来年早々、2冊目を出す予定だというから、こちらも楽しみにしたい。問い合わせは一耕社へ。

 1919年(大正8年)に創業した「第一洋食店」(錦町1)の2代目・山下正さん(97)が、1983年以降に道内紙で連載していたコラムなどをまとめた本。5年ほど前、3代目の明さん(63)がパソコンで打ち直した文を店のホームページに載せたところ、近代映画社の編集スタッフが目にし、出版が決まったという。
 創業者である故・十治郎さんは1911年(明治44年)、大正天皇が来道した時、札幌豊平館のコックとして腕を振るっていた。その後、苫小牧に移住し、第一洋食店を開業するまでの道のりが書かれている。
 洋食にまつわるエピソードや版画家・川上澄生氏らとの交流、大正期から昭和期にかけての苫小牧のまちがリアルタイムで書かれている。明さんは「苫小牧の歴史や文化についても知ることができる、興味深く読める本です」と話している。同店にも数冊在庫があるほか、苫小牧市立中央図書館でも貸し出しをしている。